さて、突然ですが問題です。



例えばの話、目の前に究極の美人が居たとします。その人はいつも高みにあって、皆に好かれて

いるとします。さあ、ここでようやく冒頭の問題がやってきます。



もしも突然、その美人に告白されたら、一体俺はどうすればいいでしょう?




セント・ウォーズ-01-




「ねえ、聞いてるの?」



どうやら俺は非常にぼんやりしていたらしい。目の前にある秀麗な顔が、これでもかと言わんば

かりに眉を顰めて俺を見つめていた。・・・と言うより思いっきり睨みつけていた。



「ええっと、雲雀さん、今、俺になんていいました?」



「だから、好きだって言ったの。沢田が好き。」



ああ、なんてことだ。雲雀さんって言う人はいつも唐突に物事を始める癖がある。それだけは本

当にどうにかしてほしいところだ。いやまあそんなところも好きなんだけど。


そう、もう言っちゃったけど、俺は雲雀さんのことが好きなんだ。


勿論、獄寺君や山本、骸やクロームだって皆好き―ああ、京子ちゃんのお兄さんも―。でも、雲

雀さんだけは別格だ。彼等のことは「友人として」。だけど、雲雀さんは違う。俺は雲雀さんに

「恋」をした。その猫のような性格に、とても端整な顔立ちに、中学生の頃から低かったその声

に。要するに雲雀さんが雲雀さんたる全てが俺は好きだということに、随分前に気がついたわけ

だ。そして俺はついさっき、雲雀さんにこの気持ちを伝えようとここ、演劇部のドアを潜ったわ

けで。まさかここで、その雲雀さんに告白されるなんて毛頭思ってはいなかった。



「ねえってば。沢田。何か言ってよ」



「お、俺も・・雲雀さんのことが好きです!」



・・・・あれ、なんだろう、この間。雲雀さんは俺の一世一代の告白を聞いた後、何故かずっとある

この部室に似つかわしくないひどく立派な机に乗せてあるノートに、何か熱心に書き込んでいる。

俺はといえば、告白を言い終わった瞬間に、この部屋の空気よりも軽い存在へと成り果てている。


・・・なんだか非常によろしくない予感がする。こんなとき、ブラッドオブボンゴレの超直感って不

便だと思う。いやもうこんな思いするくらいなら、マジ要らないよね、こんな力。そんなにこの

力がほしいならXANXASにだって今なら喜んで血の交換に応じようとか物騒な事だって考えられる

俺は、今きっと相当キてるんだろう。ああ、早くなんか言ってくれないかな雲雀さん。俺ちょっ

とどころじゃなく不安なんだけどな。



「で、君、一体何をしているの?」



「え・・と、いや、雲雀さんと両思いなんて嬉しいなー・・なんて・・・」




だらだらだら。


背中を何だか嫌な汗が伝う。正直さっきからも伝ってたけど、今の量は半端じゃない。もう嫌だ

なあ、この空気。ああ、雲雀さんの返答聞かずにこの部屋飛び出せたらどれだけ楽か。まあ、勿

論そんなこと俺には出来ないんだけど。・・・主に雲雀さんが恐いから。



「一体何を勘違いしてるか知らないけど決めた、次の主役君ね。」



ああ雲雀さん、俺の恋が叶うときって本当にあるんでしょうかね。内心そんなことを思ったのも

束の間、俺は何だか大きな蟠りを感じる。



「・・・雲雀さん、俺・・が、主役って・・何の冗談ですか・・・?」



「冗談も何も無いに決まってるでしょ。君、それでも演劇部?」



いやでも俺、マネージャー志望で演劇入っただけだし、そもそも雲雀さんがいなきゃマネージャ

ーだってやるわけないし、てゆーか俺の告白完全流れましたよね、うん、もうどうすればいいん

ですか俺全くわからないんですけど。



かかった時間、僅か5分。この5分で、これからの俺の人生、全てが決定されただなんて、勿論こ

のときは気づきもしなかった。




BACK / NEXT

08.04.08 * up

inserted by FC2 system